vol.1 私は人に恵まれている

先日、当団体スタッフが県の教職員研修にて、
「社会的養護当事者への配慮事項」等をお話しさせて頂きました。
例えば、保護者の呼称であったり、生い立ち整理の授業の際の配慮等についてです。
 また、先日も新聞にて「子供たちが傷つかないために 学校での留意点は?」
といった記事が取り上げられていました。

このように、小学校・中学校では少しずつではありますが、
社会的養護当事者への配慮がなされ始めてきています。
しかし、大学等では十分とは言えません。
最近では社会的養護出身者の大学・短大・専門学校進学率が上がってきたことによって、
大学内での配慮も必要となってきています。
今回は短大へ進学したみなみさん(仮名)からお聞きしたリアルな声を届けたいと思います。

  
(※みなみさんは、Giving Treeが行う自立支援事業の
「H29年度 スーツ等自立支援助成プログラム」の助成を受け、スーツを購入しました。)  
  

1.これまでの社会的養護の経歴は 
1歳から2歳までは乳児院に措置され、その後1度家庭復帰したと聞いています。
3歳から16歳まで児童養護施設に在籍(4歳〜16歳まで施設型のファミリーホーム)。
その後、当時担当していた夫婦がしている里親型ファミリーホーム(以下、FHという)に移り現在に至ります。
 
 
 
2.現在の所属先は
幼児教育を学べる短期大学の1年生です。
現在は措置延長して、FH宅から通っています。
 
 
 
3.一番印象に残っている時期は
中学生の頃。部活で全国大会に行ったりと、忙しかったけど一番戻りたい。
里母さんとの関係も一番濃かった時期かな。
部活で早朝に家を出て夜遅くに帰ってきたりする生活だったのと、
高校受験の為に塾に行っていたので、他の子らと違う時間軸で生活していました。
だから、里母さんと多く話する時間がありました。
また、里母さんが先生や友人の親と仲が良かったから、
共通の会話を出来たのが良かった。施設職員やったら出来てないんじゃないかな。

ほかに、
部活の顧問に出会えたことが自分にとって転機になりました。恩師のおかげで、
“人に迷惑をかけたらあかん。自分がちゃんとしなあかん”と、
人としての基礎を教えてもらいました。
厳しくもあり、優しくもありました。施設のイベント事も理解してくれていて
「特別に早よ帰れ!」と言ってくれたり、
施設のクリスマスパーティーにも来てくれました。
恩師・吹奏楽部に出会えたことで、保育士を目指すきっかけにもなりました。
 
 
出会えてよかった。
 
 
4.みなみさんにとって今の生活は
楽。今の生活に満足しています。
保育士について分からないことがあったら直ぐに里親さんに聞けるし、
悩みがあってもすぐ話をすることが出来る。
一人暮らしはしたいなと思うこともあるけど、一人になるのは嫌。
里親さんにも頼られているんかなて思うし・・・(笑)
里親さんが二人とも福祉職なので、真似したい!と思うけど、
すごすぎて自分には真似できんと思う。
 
 
尊敬する。
 
 
 
5.FHの家族はどういう存在
FHについては、自分にとって大切な家族。
“ここがなかったら、自分にとって家がなかったんじゃないか”って思う。
中学校にも行けてないかもしれんし、
実家やったら保育士を目指していないかもしれん。
短大に行けているのもFHやったからだと思う。
 
 
感謝している。
 
中学校の頃は、今の生活が送れていることは当たり前やと思ってた。
高校・大学に行き、自分の周りに母子・父子家庭の友人がいて、
大学に行けてない様子を見たり・いろんな話を聞く中で、
「FHでよかった。FHやったからこそ」と思えるようになった。
 
 
6.みなみさんにとっての家族とは
一言で言うと“あたたかい”もの。  
1:FH 2:中学からの友人家族 3:中学の友人
共通して言えるのは、自分が裸になっても大丈夫ということ。
困ったことがあったら、まず相談したいし、喧嘩しても会いに行ける関係。
自分のことを理解してくれていて、もし何かやらかしてしまっても、
受け止めてくれる!自分のことを切り捨てない!という確信がある。
 
 
私は人に恵まれていると思う。
 
 
 
7.現在の困りごとは
大学の先生から授業内で投げかけられる言葉について悩んでいます。
児童養護を教える先生が児童養護について知らない。
というのも、“児童養護”という概念ではなく、児童・当事者の心について。
どういったことを気にしているのか・気にするのか分かっていない。
 例えば、社会的養護・児童養護施設について説明する際に、
「虐待された子がいる」と言われると、自分は虐待されてないし・・・と感じたり、
虐待された子がその説明を聞くともっと嫌やと思う。
もう少し違った表現方法があると思う。
 
 
また別の場面では、“家庭養護と家庭的養護の違いを説明して”という課題があった際、
意図的に私に回答するよう当ててきたこともあった。
当事者だからといって社会的養護を知っている訳ではない。
 
さらに、“あなたにとって親権者は誰ですか?”という課題があった際、
不特定多数の学生がいる中で
「みなみさんに聞けば良かったわ。あなただったら施設長が親権者よ」といった
発言があった。入学直後にクラスのメンバーには授業中にカミングアウトしたけれども、
他の授業で知らない学生がいる場面で、社会的養護当事者ということを、自分からだったらまだしも、先生から言われるのは違うと思う。
 
学校のアドバイザーさんには相談したけど、すごく嫌な気持ちになった。
オープンにしてないだけで、当事者が居るかもしれないから、
先生の発言には配慮が必要だと思う。
 
 
高校までは自分の生い立ちについてあまりオープンに出来なかった。
大学では授業の場を借りてオープンにした。すごく気持ちが楽になった。
偏見をもたれる訳ではなかった。こんなに楽になるなら、早く言っとけばよかった(笑)
 
 
 
8.自立に向けての想い
一人暮らしは不安やけど、楽しみ!
ずっとお世話になっているから、とりあえず一回独り立ちしたい!
自分の力でやってみたい!失敗しても良い。
 
 
 
落ちてしまっても“助けて”と言って帰ってこられる場所はある。
 
 
9.これから・・・
医療保育士になりたい。実習・アルバイトで忙しいけど、頑張る。
 
 
※アイコンの写真は、みなみさんが大好きなアイドルのライブに行ったときのものだそうです。
みなみさんにとって、
元気の源であり、勉強やアルバイトを頑張ろうと思えるそうです。